ここ数か月ランニングをしている。
大した距離ではないし、歩いているのと変わらないような気もするけれど、思っていたよりもずっと習慣化しやすいものだった。
今走っているのは、ちょっとした高架橋の両脇の道を行って帰ってくるコースで、人の少ない穴場だ。
走りはじめた頃はもっと人が多くて、溌溂とした年配者によく追い抜かれた。近頃はめっきり減った気がする。たぶんコロナとか寒くなったからとかが理由だろう。……それが理由と思いたい。自分が走りはじめたからではないと信じてるっ。
走る時間、陽の光が片側からさす。
高架橋をくぐって畑の広がる場所に出ると、真横に影がのびて並走するのだけど、その影が格好いい。
前を見て走っていると、止まっているのかと思うくらい景色は進まないし泣きたくなるのに、その影は違う。
のり面に生える草の上をビュンビュン駆けていく。
地面を蹴って足が離れた瞬間、影は一瞬静止しふわっと自由になって飛んでいるように見える。
髪がなびく。見えない風がそこにあるのを確かに感じる。
電車の中から見る近くの景色みたいな効果だろうか、ずっと見ていたい気分になる。それを眺めているだけで、「トロいと思っていたけれど、本当はこんなに速く走っているのかもしれない」と勇気が湧く。周りから見れば速いのかも……!! なんて。審議は必要だろうか?
ただ残念なことに、ずっと影ばかりを見ているわけにはいかない。
行きて還りし物語には折り返しがあるのだ。
折り返し地点。
坂道を上り終えると今まで高いところにあった高速道路は眼下へ移り、その上に架かった橋を渡る。
そこは車もよく通るので前を見ないと色々なところに迷惑をかけかねない。
よそ見ダメ。絶対。
それになにより、橋を渡った先にある開けた景色に目を奪われる。
晴れた日は本当に気持ちがよいのだ。
何の気なしに書いていたが、こう書くとちょっぴり隠喩的な話だね。
帰り路、身体の反対側にのびる影は進行方向よりも少しだけ後ろにあるから上手に見ることができない。その代わり、道路の途中途中にあるカーブミラーで自分の走る姿を確認する。
こちらはこちらで、鏡の曲面がいい具合にスピード感を演出してくれて気に入っていたりする。一瞬しか眺められないのが残念だけど。
そうそう立ち止まってはいられないよなぁ。
ナルシストと思われないようにしないと。
人のいない時にやろう。
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