あわあわの世界

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(99)8-17:雷雲の罪 前編 二大派閥と、暗い部屋のライオン

***  オセロットは今にも倒れそうな身体を支えられながら背筋を伸ばし、震える前足を地面に突き立てた。銀色の土が足先を埋めている。 『巻き添えをくわせてしまっているのだ』  両脇から支える雪雲ネコさまと雪崩ネコさまは、その言葉の意味と覚悟を...
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(98)8-16:当事者

***  顔をあげ、地面におしりをついて座るオセロット。  その前足がぶるぶると震えていることに気づいたのは茶色いマイケルだけじゃないようで、銀色の樹洞のなかには言いしれない緊張が走りはじめた。 『大空や大地の神たちは“いつかのレース”で企...
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(97)8-15:レースの役割

*** 『このレースは星の力の発散なんだ』  すっと背筋を伸ばしたオセロットが、茶色いマイケルを見据えてそう言った。 「星の力の、発散」  膝を抱えて座っている子ネコは、ただ口元でその音を繰り返す。その意味が頭の中にじわじわ染み込んでくると...
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(96)8ー14:オセロット

***  声がしたのは、子ネコたちの集まりの中からだった。  入り口からくる光を背にした茶色いマイケルは、ゆるくカーブした壁に沿って並んだネコたちを順番に見渡した。右端から順に虚空のマイケル、灼熱のマイケル、マルティンさん、ケマールさん、そ...
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(95)8ー13:虚空の空 後編 寂しがりの大空に

*** 「マルティンさん、心とは空だよ」  鮮緑の瞳に輝きが増した。  虚空のマイケルのまっすぐな声に、マルティンさんの耳が立つ。 「誰しもが青空を抱えて生まれてきている。遥か彼方まで見渡すことのできる澄んだ青空をその内に宿してな。ところが...
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(94)8ー12:虚空の空 前編 孤高の空

***  虚空のマイケルの口はたわんでいた。  だけどエメラルドグリーンの瞳はどこまでも真剣で、樹洞の中にいる誰よりもマルティンさんのことを真っ直ぐに見ていると、茶色いマイケルは感じたよ。 「これは君たちにも話していないことだが」  隅っこ...
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(92)8ー10:特別な存在

***  マルティンさんは壁の形を確かめるように身じろぎし、わずかに前のめりになって座り直した。 「つまり、私の勘違いだとおっしゃりたいので?」  声にはやはり鼻で笑う音がある。目は笑っていない。 『アイツ昔からバカだけどよー、他のヤツを利...
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(91)8-9:ネコはオモチャ

***  風ネコさまは宙をしなやかに歩いて寄ってきて茶色いマイケルの右肩に跳び乗った。樹洞の入り口からさしこむ光が少しだけ明るくなった気がしたよ。  暗がりで神さまの悪口をわめき立てていたマルティンさんも、その神さまからの同意と聞いて顔をも...
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(90)8-8:神さまは横暴だ

***  入り口からの光がマルティンさんに、茶色いマイケルの影を薄く乗せている。 「君たちはここに来るより以前、神さまと会ったことはあるかね?」  タキシードの袖についた銀色の土を見つめ、そっと払いながら尋ねるマルティンさん。その動きはたど...
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(89)8-7:スノウ・ハットでスヤスヤと

*** 「雪雲ネコさまたちが作ったって、あの彫刻を!?」  スノウ・ハットにある『氷の神殿』。  それは『氷の大噴水広場』から『氷の地下道』を潜った先にある、文字通りすべてが氷でできた神殿だ。仄かな灯りを頼りに白い息を吐きながら地下道を歩い...