あわあわの世界

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(28)あわあわの幕間2:大戦の残火 殺猫鬼ムル④ 笑った鬼ネコ面

***  ムルは屠殺場で働き始めた。  食品プラントラインの再稼働によって増産された家畜。それを解体するネコの手が足りていないのだという。  そういう状況にしては安い給料だったが、元々浪費するという感覚を持っていないムルにしてみれば、給料な...
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(27)あわあわの幕間2:大戦の残火 殺猫鬼ムル③ その日を境に

***  ウーラ孤児猫院に『一斉消毒』の依頼が届いたのは秋口のことだった。  ムルたち『ピサト』の活躍もあり反撃の勢いを増していた軍部は、冬になる前に敵国の重要拠点を壊滅させるという決定を下した。その知らせを誰よりも喜んだのは他ならぬウーラ...
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(26)あわあわの幕間2:大戦の残火 殺猫鬼ムル② ピサト

***  『ピサト』に与えられる仕事には、『個別消毒』と『一斉消毒』とがある。  個別消毒とは、軍部にとって邪魔な『ばい菌』を1匹ずつ消し去ることで、これはピサト数名を集めたチーム単位で行う。  一方、一斉消毒というのは、『ムル』たちの待ち...
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(25)あわあわの幕間2:大戦の残火 殺猫鬼ムル① 孤児猫院

***  その赤子ネコは、路上の端で『猫買い』に買いとられた。  ちゃりん、と掌に落とされた小銭の軽さに母ネコは顔をしかめたけれど、 「今の時代、アンタみてぇな親ネコがわんさかいるんだ。後ろを見てみなよ。薄情が列を作って並んでやがる。バカみ...
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(24)5-10:氷の朝

***  その時何が起こったのか、茶色いマイケルには見えなかった。  『殺猫鬼』が、横たわっている灼熱のマイケルに向けて飛びかかり、刃物で真上から刺し殺そうとしたところまでは見えたんだ。だけど、2匹のあいだの空間が一瞬歪んで見えて、それから...
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(23)5-9:殺猫鬼

***  暗がりにぼうっと浮かび上がる青白い、鬼ネコの笑顔。  ただし本当に笑っているかどうかはわからない。お面だったんだ。  そのネコは、昏い水の底から浮かび上がろうとするように、茶色いマイケルたちに白い手を伸ばす。肉球と肉球の間に弾痕の...
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(22)5-8:プルーム上の子ネコたち

***  サビネコ兄弟の乗る『小型スラブ』が、ぼんやりと青い闇の中を遠ざかっていく。それを灼熱のマイケルは、『プルーム』の最後尾であぐらをかいて眺めていた。 「あの動き、王家直伝『脱出ネコ術』に似ているように思えたが……」  虚空のマイケル...
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(21)5-7:甘そうな名前

***  ドン、バン、ゴツン、メキッ、とネコ武術の闘いというのはそういう音がするものとばかり思っていた。  だけど目の前で繰り広げられているものに音らしい音はなく、あるとすれば赤ちゃんネコの肉球に触れる時の、ぷにっという鳴ったのかどうかも怪...
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(20)5-6:スラブの芯とプルーム

*** 「とりあえずここから離れるぞ。全員乗ったな? いいぜコハク!」 「んもー、結局俺ばっかりにやらせて。そんじゃ、はい、ぐーるぐるー!」  サビネコ兄弟の弟コハクさんが、両の手の平をそれぞれ別のスラブに触れさせる。一つは茶色いマイケルた...
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(19)5-5:キャティ・マッド・グレース

***  茶色いマイケルたちがようやく立ち上がって駆け付けた時、ネコたちに取り囲まれた灼熱のマイケルは、まさかの苦戦を強いられていた。  あの”見えない攻撃”だ。  フードを被ったネコのボーガンから放たれる”見えない矢”。それからトム&チム...