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「おーい、子ネコたちー! 聞こえてるかーい?」
茶色いマイケルは両手を口に添えて、大声で呼びかけた。
「ボクたち今からシロップ祭りをするんだ! みんなもおいでよー!」
「「「おいでよー!」」」
チルたちを含めた全子ネコがあとを追う。
「シロップならここにいっぱいあるからさ!」
「「「シロップあるよー!」」」
「みんなでおいしい雪を食べつくそー!」
「「「食べちゃお食べちゃおー!」」」
澄んだ空気にテンポよく、歌うようなリズムで声が伸びていく。よく見ればあちこちの窓に子ネコの影が見えた。
ようし、あと一息だ。
大きく息を吸い込んだそのとき、
「ボクのシロップもたくさん食べていいぞー!」
ひときわ大きな声で太っちょ子ネコが叫んだ。
「ボクは猫一倍食いしん坊だからー、シロップも猫一倍……ううん、猫五倍はあるんだー!! みんなで食べても食べきれないくらいあるから安心しておいでよー!!」
そこへ女の子子ネコが混ざろうとして、
「アタチのもー……ぅうう゛うぅ……」
だけど最後まで言えずに泣いちゃった。
チルたちは5匹がかりですべての方向を見回し、おいでおいでを繰り返していたよ。茶色いマイケルも負けていられないね!
「ほら見てみんなー! これがメロンシロップ!」
すると窓の内側の子ネコたちがしっぽを立てた。
「これがイチゴシロップで、こっちがオレンジシロップ!」
ひょこっ。興味津々の大きな瞳。
「ブドウシロップに梨シロップ。こっちはすっぱいすっぱいレモンシロップ!」
何匹かの子ネコは目と口をすぼめた。
「じゃあこの……あまーい香りのする、優しい色のシロップは……なーんだっ!」
茶色いマイケルがそう質問した瞬間、バタッ!!
そこここの子ネコ部屋の窓が、バタッ!!
一斉に全部開いたんだ! これにはチルたちや太っちょ子ネコもびっくり仰天。女の子子ネコなんて「ピャッ」って言って飛び跳ねちゃった。
開いた窓から鼻を突きだす子ネコたち。スンスンスンスン、香りを嗅ごうとする鼻息がいくつも重なって聞こえたよ。
茶色いマイケルはぺろりと口元をなめた。
「このシロップはね……」
右手に持ったシロップを、みーんなに見えるようにゆーっくり見せて回る。その動きに合わせるように、子ネコたちは窓から体を突き出した。もう体半分出ちゃってる子までいる。
さぁ、全員見たかなぁ? ってタイミングで、茶色いマイケルが何をしたか、わかるかい?
「これを食べられるのは、今だけだっ! 今来なけりゃ全部、ボク一匹で食べてやるっ!」
そう言ってなんと、走って逃げちゃった!
遊びの走りじゃあないよ? 本気のネコダッシュさ。
雪の地面に噛みつくように、低く低くとったその姿勢。服の上からでもわかるくらい、しなやかに筋肉を動かして茶色いマイケルは駆けだした。
するとどうだい。
窓から身を乗り出していた子ネコたちが ピョーン!
ロケットみたいに飛び出した! 危ないね。でも大丈夫、だって猫だから!
空中で身をひるがえして くるりんぱっ。きれいに着地したかと思ったら、その場で地面を後ろに蹴って走り出した。血相変えて走ってく。
一息遅れて、
「「「ま、待ってよ! 茶色いマイケルお兄ちゃん!」」」
茶色いマイケルの連れてきた子ネコたちが順に、慌てて後を追いかけはじめた。
よし、みんなついてきたな。
一匹と、数十匹と、数百匹の子ネコたちで 迷路街をかけっこだ!
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