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「いいかいみんな、大人ネコたちには気づかれないようにするんだよ?」
茶色いマイケルのお願いに返事を一つ。子ネコたちは身を低くした。
「もし子ネコを見つけたら、おいでおいでって手招きしてね。一緒に連れて行くからさ」
じゃあ、と言って茶色いマイケルも背中を丸める。
「よーい…………ドンッ!」
30匹くらいいる子ネコたちは、先頭の茶色いマイケルのシッポを目印に、スノウ・ハットの中心を駆け巡った。途中途中にはもちろん大人ネコもいたんだけど、
「みんな、こっちだ! こっちへおいで! はやく行かないと無くなっちゃうぞ! 足音なんか気にするな!」
と茶色いマイケルがわざと大きな声で子ネコたちの群れを誘導する。大人ネコたちの目の前にね。すると大人ネコたちは、
「あらかわいい。休憩かしら?」
「縄張りの雪を食べつくしちゃったんでしょう。今年はすごい勢いね」
「団体さんのお通りだ! こりゃああっちの縄張りの雪も食べつくされちまうなぁ」
あっはっは、と笑い声が弾む。にっこりと目を閉じて。
そこで茶色いマイケルは、後ろから付いてくる子ネコたちを振り返り、パチパチと二回ウィンクをしてから、シッポを口の前に小さく立てた。シーッってね。
すると子ネコたちは一瞬で、また足音を消して走り出す。
ただでさえ素早いネコが一斉に音を消したらどうなると思う?
大人ネコは、瞬きをした途端に子ネコたちがいなくなったと思ってびっくりしたよ。「どこに行ったんだ?」って言葉も出てこないくらいにさ。
子ネコたちは大いに面白がった。一斉に足跡を消すのなんて かくれんぼで慣れてるんだけど、大人ネコがあんなに面白い反応をするってことは知らなかったからね。何度か同じことを繰り返し、お腹の中でキャッキャと笑いながら走ったよ。
そうして気づけば迷路街。
だけど夢中で走り続けた子ネコたちは、そこがどこかなんて ちっとも気にしなかった。
ただただ茶色いマイケルの茶色いしっぽを目指して走るだけ。そのシッポが右へ折れれば右へついて行き、左へ折れれば左へついて行き、グルンと一回転してみせたなら狭い路地の壁だって走っちゃう!
ただね、すごいスピードで走るもんだから、止まる合図には間に合わなかったんだなぁ。
しっぽをSの字に曲げた茶色いマイケルがスピードを緩めると、「わわっ」と声をそろえてチルたちがつまづいた。
その後ろを走っていた女の子ネコたちは「キャア」と小さく叫んでぎりぎりで横に避ける。だけど、ぼんやりかき氷のことを考えていた太っちょネコは転んじゃった。
あっという間に子ネコたちは重なり合い、ごろんごろんともつれて、それからようやく止まった。
「しまった、みんな大丈夫かい!? ケガはしていない!?」
すると、もつれた子ネコたちの方から、きょとんとした瞳が返ってくる。
そして、
アッハハハハハハハハハハ!!!
みーんな、一斉に笑ったよ。
ずっと我慢していたからね。こらえきれなくなっちゃったんだ。
茶色いマイケルはホッとして、尻もちをついてから、みんなと一緒に大笑いした。
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