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実際、燃える炎の子ネコはいい子ネコだった。
迷子の子ネコの相手をする様子を見ていると分かるよ。とても温厚なんだ。
子ネコってさ、興奮してくると言いすぎちゃったり、やり過ぎちゃうことがあるんだけど、そういうのを全く気にしない。
迷子の子ネコが疲れたから肩車をすることになったんだけどね、その時、あの燃えるような毛をわしっと引っ張られていたのに、文句の一つも言わず涼しい顔をしていた。
痛みを感じないのかなって思ったんだけど、それよりも子ネコを楽しませようとしてるのが伝わってくるんだ。相手のことをよく見てるのかな。茶色いマイケルがスノウ・ハットの案内を引き受けた時も、
「無作法をした。この通り、許してほしい」
って、姿勢を正して頭を下げていたし、この子ネコは表情とか感情とかを、すっごくよく観察している気がするな。
実を言うとね、この時の茶色いマイケルはずっと見つめられていたことがまだ頭のどこかに引っかかっていたんだ。気持ちにささくれが残ってた。「さっさと案内を済ませちゃおう」とまでは考えてなかったけど、それに近いことは何となく思っていたかもしれない。
だけど頭を下げられた瞬間、そういうイヤな気持ちがふわっとどこかへ飛んで行った気がしたんだ。
気にしてないよ、って言うと、
「そう言ってくれるとありがたいな」
なんてお礼まで言うもんだから悪い気はしないよ。こんな事って普通できるのかな。礼儀正しいだけなのかもしれないけど、それだけじゃできない気がするんだ。
礼儀正しいといえば氷の地下道で、白ネコ修道士さんを見かけるたびに腰を深く折ってあいさつしていたな。
白ネコ修道士さんたちは一言もしゃべらず、目をつむって立っているだけだから全く反応はないんだ。それでも氷の神殿に着くまでに出会った一匹一匹に、腰を折り曲げておじぎをしていた。
その先の氷の神殿でも子ネコの相手をしてたっけ。
小さな子ネコにとって、氷の神殿での”遊び”は退屈なものなんだ。
氷像自体には興味を持つんだけど、手で持ったり、ぶつけたりして遊べないし、うるさくしたら「しぃーっ」って怒られちゃう。だからどこかムスッとしている子ネコが多い。
そんな子ネコを見かけるたびに燃える炎の子ネコは、しっぽをユラユラさせて遊んであげていた。もちろん大きな声は出さないし、出させない。どうやったのかって?
「”声を出さない”という遊びをしたんだ」
って後で教えてくれたよ。なるほど、そういうのって子ネコは大好きだ。
こんなふうに”猫の良い”子ネコなんだけど知識もすごいんだよなぁ。いろいろなことを知ってる。
特に驚いたのがスノウ・ハットのことなんだ。
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