みなさんは「fix」という英単語の意味を知っていますか?
辞書をひくと「固定する」「修理する」「決定する」「解決する」……と、いくつもの意味があります。ただ、元をたどれば「固定する」から変化したものでした。
その変化の歴史が、なかなか興味深い内容でしたのでぜひお付き合いください。英単語の理解や暗記に役立つかもしれません!
いや、聞いた事ない言葉じゃむ
そういうこと言わないの!
1. はじめに
私はこの「fix」という英単語の意味を、「固定する」「修理する」と覚えていましたが、ビジネスシーンでは「この日程をフィックスしましょう」といったふうに、「決定する」という意味で使われます。
このことを知った時、「なるほど『日程を固定する』⇒『日程を決定する』という感覚か」と納得したのですが、別の疑問が浮かびました。
「固定する」と「修理する」とでは、意味が違いすぎるなぁ、と。
この2つの意味につながりはあるのでしょうか?
この疑問を解消するため、まずはfixの意味を確認しましょう。
2. 「fix」の基本的な意味
「fix」には主に以下のような意味があります。
- 修理する:壊れたものを直すこと。
- 例:”Can you fix my bike?”
- 訳:「私の自転車、直してくれる?」
- 決定する:日程や価格を確定すること。
- 例: “Let’s fix a date for the meeting.”
- 訳:「会議の日、決めようよ」
- 固定する:物体を動かないように留めること。
- 例:”Please fix the mirror to the wall.”
- 訳:「鏡を壁に付けて(固定して)ください」
- 調整する:状態を整えること。
- 例:”I need to fix my hair.”
- 訳:「髪を整えなきゃ」
- 準備する:食事や飲み物を用意すること。
- 例:”I’ll fix dinner for us.”
- 訳:「夕食、作るよ」
- 解決する:問題や課題を解決すること。
- 例:”We need to fix this issue before it escalates.”
- 訳:「問題が大きくなる前に、解決しなきゃ」
- 視線を向ける:目や注意を特定の対象に向けること。
- 例:”He fixed his gaze on the speaker.”
- 訳:「彼は話し手をじっと見つめた」
- 麻薬の投与(スラング):特に麻薬の使用を指す場合。
- 例:”She needed a fix of heroin.”
- 訳:「彼女はヘロイン(麻薬)を使わないとだめだった」
(注意: この使い方はスラングであり、日常会話で安易に使うべきではありません。そして麻薬はダメ!)
- 困難な状況(スラング):特に厄介な状況や窮地を指す場合。
- 例:”He found himself in a fix after losing his job.”
- 訳:「彼は仕事を失って、困った状況に陥った」
※実はもっとたくさんあるのですが、主だったものだけを挙げています。
これらを見ると、
- 固定する、決定する
- 修理する、調整する、解決する
あたりは意味的なまとまりがありそうですが、「困難な状況(スラング)」や「麻薬の投与(スラング)」ともなると、「固定する」や「修理する」とつなげて考えるのは非常に困難で、頭の中が???で一杯になってしまいますね。
これらをfix(解決)するため、次は語源を見てみましょう。
3. 語源をひもとく
「fix」の語源をひもとくと、そのルーツは印欧祖語(英語、フランス語、ドイツ語、ロシア語、ヒンディー語など、多くの言語の祖先とされる仮説上の言語)にさかのぼります。
その時点ではまだ「fix」の形はなく、「突き刺す(突き刺して固定する)」という原始的な概念でした。そこからラテン語や古フランス語などに派生し、より抽象的で多様な意味を持つ単語へと進化したようです。
簡単な説明つきの年表を2つ用意したのでご覧ください。
- 印欧祖語 “*dheigw-“(紀元前4000年頃)
- 意味:突き刺す、固定する
- これが「fix」の最も古い起源です
- ラテン語 “figere”(紀元前1世紀頃)
- 意味:固定する、留める、打ち込む
- “*dheigw-“から派生し、より具体的な動作を表すようになりました
- ラテン語 “fixus”(紀元前1世紀頃)
- 意味:固定された、動かない、確立された
- “figere”の過去分詞形で、状態を表す形容詞として使われました
- 古フランス語 “fixer”(12世紀頃)
- 意味:固定する
- ラテン語から派生し、フランス語に取り入れられました
- 中英語 “fixen”(14世紀後半)
- 意味:目や心を何かに向ける最初は比喩的な意味で使われ始めました
- 固定する、目や心を向ける:14世紀後半(late 14c.)
- 物理的に何かを固定する意味と、比喩的に「目や心を何かに向ける」という意味の両方で使用されはじめます
- 色や物を定着させる:1660年代
- 染色や写真技術に関連する新しい意味が加わりました
- 調整する:1660年代
- 物事を整えるという意味が追加されました
- 修理する:1737年
- 壊れたものを直すという新たな意味が登場
- 不正に操作する:1790年
- 試合や陪審などを不正に操作するという意味が追加
- 麻薬の投与:1934年
- スラングとして、麻薬の使用を指す意味が追加されました
14世紀後半で比喩的な意味を含むようになったことが、ひとつのターニングポイントでしょう。
そこから「修理する」という意味が現れるまでの変化を見ると、「固定する」と「修理する」、この2つの意味につながりが見えてきます。
4. 「固定する」と「修理する」のつながり
注目すべきは以下の部分です。
- 固定する:動いているものを止める
- 不安定な状態 → 安定した状態
- 目や心を向ける:注意を集中させる
- 散漫な注意 → 集中した状態
- 調整する:バランスを整える
- 不均衡な状態 → 均衡のとれた状態
こうしてみると、どの意味にも「望ましくない状態から望ましい状態への変化」という中心的なイメージが含まれていることがわかります。 そして、この中心的なイメージは「修理する」にも当てはまります。
- 修理する: 壊れたものを直す
- 不具合のある状態 → 正常な状態
このように、一見異なる意味に見える「固定する」と「修理する」も、「望ましい状態への変化」という共通の概念で結びついているのです。
そして、たくさんある「fix」の意味もまた、この中心的なイメージでつながっていますので、以下をクリックして確認してみてください。
- 決定する:日程や価格を確定する
- 流動的な状態 → 確定した状態
- 準備する:食事や飲み物を用意する
- 未準備の状態 → 用意が整った状態
- 解決する:問題や課題を解決する
- 問題がある状態 → 解決された状態
- 麻薬の投与(スラング):特に麻薬の使用を指す
- 禁断症状がある状態 → 一時的に楽になる状態
「困難な状況(スラング)」について
ここまでは「望ましい状態への変化」という中心的なイメージで理解しやすくなったと思いますが、「困難な状況」を示す「fix」は、中心イメージから理解するのは難しいかもしれません。それよりも、
困難な状況→ 身動きできない状況→ 固定された状態
と考えるほうがしっくりくると思います。
固定されてにっちもさっちもいかない状況を想像するといいわよ
サッチモはルイ・アームストロングの愛称じゃぞい
関係ないこと言うのやめて!
6. まとめ
- 「fix」は「固定する」から変化し、さまざまな意味を持つようになった。
- 「望ましい状態への変化」という中心的なイメージが含まれている。
- 「固定する」と「修理する」は、この中心的なイメージでつながっている。
いかがでしたか?
今回は「fix」という英単語の「固定する」「修理する」という二つの意味が、どのように繋がっているかを語源から探ってみました。
言葉の背後にある歴史や変遷に目を向けると、新たな発見や気づきが得られて興味深いですね。日本語でも面白いものがあるかもしれません。
皆さんも、日常で使う言葉についてその由来や意味変化にfix(目を向ける)してみませんか? 語源に詳しいサイトのリンクを貼っておきますので参考にされてください。
- Online Etymology Dictionary (英語)
- 語源由来辞典 (日本語):
もう一生分「fix」って使った気がするじゃむ
……(否定できない)
※この記事に使ったトップ画像と挿絵画像は、AIで生成したものです。
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