秋は紅葉の季節です。
少し前まで涼しげな緑色をしていた木々が、いつの間にか燃えるような赤や黄色に染まっているのを見て驚いたのは私だけではないでしょう。自然の美しい変化には、いつも心を奪われます。
それにしても、どうして葉っぱの色が変わるのでしょうか?
改めて考えると不思議ですよね。昔、学校で習ったような気もしますが、すっかり忘れてしまったので、調べてみることにしました。 この記事では、紅葉の仕組みや条件についてわかりやすく解説します。自分だけの紅葉スポットを見つけるヒントにもなるので、ぜひ最後までお付き合いください!

じゃむも、すっかり色づいてきたじゃむ

もとからその色でしょ!
1. そもそも紅葉って何?
秋を彩る「紅葉」は、古くから親しまれてきました。
そもそも紅葉(こうよう)とは、樹木が葉っぱの色を変化させる現象のことであり、そして、その樹木の総称でもあります。つまり、カエデやイチョウの黄色、ケヤキの褐色も「紅葉」に含まれます。
また、「紅葉」は「もみじ」とも読み、「カエデ(モミジ)」のように表記されることもあります。実は、植物学上「モミジ」は「カエデ」の一種なのです。
ややこしいのでそれぞれの関係を整理してみると、
- 紅葉(こうよう・もみじ):秋に葉の色が変わる樹木の総称
- カエデ:ムクロジ科カエデ属の樹木の総称
- モミジ:葉が手のひら状に深く裂けているカエデの一群(イロハモミジ、ヤマモミジ、オオモミジなど。植物学上はカエデ属ムクロジ科の中で「モミジ節」に分類される)
- その他のカエデ:葉の切れ込みが浅い、または裂けていないカエデ(イタヤカエデ、ウリハダカエデなど)
- カエデ:ムクロジ科カエデ属の樹木の総称
となります。
カエデとモミジは植物学的には同じ仲間ですが、その見た目の特徴から呼び分けられているのです。紅葉を楽しむ際には、こうした樹木の種類にも注目してみると、より一層深く秋の自然を感じることができるでしょう。
代表的な紅葉をいくつか紹介しますね。

- カエデ(楓)とモミジ(紅葉):
カエデは、ムクロジ科カエデ属の落葉樹の総称で、日本には約28種類のカエデが見られます(変種を含む)。名前は「かえるの手」を意味する「かへるで」から来ており、葉の形がカエルの手に似ていることに由来します。その中でも特に葉の切れ込みが深い形をした種類のものが「モミジ」と呼ばれ、ヤマモミジやイロハモミジなどが代表的です。 - イチョウ(銀杏):
イチョウは中国原産と考えられており、扇形をしたユニークな葉が特徴です。一斉に黄金色に染まるイチョウ並木は、秋の風物詩ですよね。 - ナナカマド(七竈):
山間部でひときわ目を引くのが、ナナカマドの紅葉です。ナナカマドはバラ科の落葉樹で、夏には白い小さな花を咲かせ、秋には真っ赤な実をつけます。紅葉と赤い実のコントラストは美しく、古くから庭木としても親しまれてきました。燃えにくいことから「七度かまどに入れても燃えない」と言われるほど丈夫な木で、その生命力の象徴とも言える紅葉は、見る人に勇気を与えてくれるでしょう。 - ケヤキ(欅):
街路樹や庭木としても人気のケヤキは、秋になると美しい黄褐色に色づきます。以前はニレ科に分類されていたアサ科の落葉高木で、その堂々とした姿は、日本の風景に重厚感を与えます。ケヤキの紅葉は派手さはありませんが、落ち着いた色合いが秋の深まりを感じさせ、どこか懐かしい郷愁を誘います。
他にも、スギやヒノキなど、常緑樹(一年中緑の葉をつけているように見える木)で紅葉するものも存在します。
2. 紅葉の仕組み
2.1 3つの色素
葉色の変化には、3つの色素が関わっています。
- クロロフィル: 緑色で、光合成を行うために必要な色素。
- カロテノイド: 黄色やオレンジ色の元となる色素で、β-カロテンなどが含まれている。
- アントシアニン: 赤色の元となる色素で、特定の条件下で生まれます。
こういう科学的な名前は、それぞれの語源をみるとイメージしやすいかもしれません。
クロロフィル (Chlorophyll)
- 語源: 「クロロフィル」という言葉は、ギリシャ語の「chloros(緑)」と「phyllon(葉)」から派生しています。これは、主に植物の葉に存在し、葉を緑色に染める色素であることを示しています。
- 特徴: クロロフィルは光合成において重要な役割を果たし、太陽光を吸収してエネルギーに変換するため、植物が生きるために欠かせない成分です。
カロテノイド (Carotenoid)
- 語源: 「カロテノイド」は、ラテン語の「carota(ニンジン)」と、「-oid(似ている)」という接尾辞が組み合わさったものです。これは、ニンジンがカロテノイドを豊富に含むことから名付けられました。
- 特徴: カロテノイドは黄色やオレンジ色、赤色の色素であり、植物や藻類に多く含まれます。光合成の補助や抗酸化作用など、いろいろな役割を持っています。
アントシアニン (Anthocyanin)
- 語源: 「アントシアニン」は、ギリシャ語の「anthos(花)」と「kyanos(青)」から派生しています。これは、アントシアニンが多くの花や果物に含まれ、青や紫を含む幅広い色調を生み出すことに由来しています。
- 特徴: アントシアニンは植物において重要な色素であり、環境条件や細胞液のpH(水素イオン濃度指数)によって青や紫から赤まで様々な色を示します。紅葉では主に赤色の原因となりますが、他の植物では青や紫の色素としても機能します。また、抗酸化作用やUV防御機能を持ち、葉を保護する役割も果たします。

アントシアニンだけややこしいじゃむね
2.2 葉の変化

私たちが普段目にしている緑色の葉っぱは、どのように移り変わっていくのでしょうか。季節ごとに見ていきましょう。
***
夏:夏のあいだ、太陽の光をたっぷりと浴びた葉っぱは、木に必要な栄養を作り出しています。このとき光合成を助けている緑の色素がクロロフィルです。
秋:秋になると日照時間が短くなり、涼しい風が吹き始めます。この変化によって、葉っぱの内側では色素の入れ替わりが進みます。
- クロロフィルが徐々にに分解され、葉っぱの表面から緑色が失われます。
- クロロフィルの下に隠れていたカロテノイドが表にでて、葉っぱは黄色やオレンジ色に変わります。
- 一部の木ではアントシアニンが生成され、葉を赤く色づけて保護します。
冬:秋が終わると、木は葉を落とし、栄養を幹や根に移動させて冬越えのエネルギーを蓄えます。また、地面に落ちた葉っぱは微生物に分解されて土を肥えさせます。
春: 温かくなってくると、木は活動を再開します。新しい葉が芽吹き、再びクロロフィルが生成されて緑色に戻ります。これにより光合成が始まり、植物はまた成長をはじめるのです。
***

同じ木でも黄色だったり赤だったりするのは何でじゃむ?

赤くなるにはいくつかの条件があるみたいよ!
3. 紅葉しやすい条件

赤く色づいた紅葉を見るには、いくつかの条件があります。
- 昼夜の気温差:大きな温度差がアントシアニンの生成を促進し、赤く鮮やかな葉を作ります。
- 日光:十分な日光がアントシアニンの生成に必要です。
- 最低気温:一日の最低気温が8℃以下になると紅葉が始まり、5~6℃以下になるとさらに進行します。
加えて、適度な湿度も紅葉の美しさに影響します。乾燥しすぎると葉が縮れてしまうことがあるためです。
これらの条件を考慮すれば、自分だけの穴場スポットを見つける手助けになるかもしれません。例えば、高地や日当たりの良い場所では、これらの条件が整いやすく、美しい紅葉を見ることができるでしょう。
4. まとめ
- 紅葉は主に落葉広葉樹による秋の現象。
- 葉っぱの色はクロロフィル、カロテノイド、アントシアニンという色素の出かたによって決まる。
- 秋になると気温が下がり、クロロフィルが分解されて色が変化する。
- 美しい紅葉を見るためには昼夜の気温差や日光、最低気温など特定の条件が必要。
全国の紅葉状況がわかるサイトがあったので参考までにリンクを貼っておきます。
紅葉情報【2024】今見頃がわかる – ウェザーニュース
https://weathernews.jp/koyo/
秋も深まって、すでに見頃が終わった地域も多いかもしれませんが、条件によってはまだまだ楽しめるはずです。紅葉を眺める時はぜひ、その背後にある仕組みについて考えてみてください。そして、自分だけのお気に入りスポットも探してみてください!
余談:紅葉を英語でいうと?

「紅葉」は英語で以下のように表現されます。()内は直訳。
- Autumn foliage(秋の葉っぱ)
- Fall colors
- Leaf peeping(葉っぱのぞき見)
- Fall foliage
- Autumn leaves
- Colorful leaves
“Leaf peeping”は、特にアメリカやカナダでよく使われる表現で、紅葉の美しい景色を求めてドライブやハイキングを楽しむそうです。
個人的には「fall colors」が好きですね。fall(落ちる)という語を使っているのに、とても賑やかで楽しく感じられるからかもしれません。
紅葉は日本特有の現象ではなく、北米やヨーロッパなどでも見られるようです。地域によって紅葉する樹木の種類が異なるため、それぞれ違った趣があるでしょう。この時期に海外渡航の予定があれば気にかけてみてください!

ぬこじゃむマンガ無料配布中!

紅葉を眺めたあとは、ぬこじゃむマンガを読むのが科学的に吉じゃぞい!

科学的に吉!?
※この記事に使ったアイキャッチ画像と紅葉の挿絵画像は、AIで生成したものです。
コメント投稿
地元が山中の田舎で、昔からよく紅葉した葉を見ては「どういう仕組みでこうなるんだろ?」と、何度も何度も(それこそ今年も)思っていたはずなのに、ついぞ今日まで調べずにきましたw
なので今回の記事に取り上げていただいて長年の疑問も解消しましたし、語源なども勉強になりました( ´∀`)ありがとうございます!
それにしても身近で当たり前のように見ていたあれらの葉っぱが、説明されていたように条件が揃っての変身を遂げていたとは。
確かに寒さは関係してると思ってましたが、単に枯れる途中で色が抜けてるだけなのなのかなと考えていたので興味深かったです。
こちらはもう秋が終わってすっかり冬に突入し始めてますが、少し前にはじゃむのように鮮やかな黄色をしたイチョウを拾ったりもして、やはり四季では秋が一番好きだなぁと思いました。
これからどんどん寒くなりますので、ぬこじゃむさんも体調にはお気をつけて!(゚-゚*)
青浦さん! またまたコメントとお気遣い、ありがとうございます!
長年の疑問が解消されたのはなによりで、いやぁ、調べた甲斐がありました! 今に至るまで疑問すら持たなかった過去の自分にはメッ!してやりたい気分ですがw
自然の仕組みって本当に興味深いですよね。「おお、キレイ」と感じるくらいだった紅葉も、深く知ることで今年はまるでナショナル〇オグラフィック的な視点で楽しむことができました。もう少し早く記事を書いていれば、一緒に楽しめたのになぁと少し後悔しています(><)。
それにしても、天気予報を見たらそちらはもう雪マークがついているんですね。雪も風物詩の一つですし、雪かきでそれどころじゃなくなる前に楽しんでください!